19Jun
「お父さん、お母さん、
お腹すいたよ」
戦場は生きるか死ぬかの
戦いだ。
あなたには”食事ひとくち”が
どれほどの価値があるか
わかるだろうか?
ひときれのパン
立ちっぱなしだった私は
体も心も疲れきっていた。
真夜中の誰もが
寝静まった後。
危険がないか
まわりに目をひからせるのが
私の役目だった。
そんな私に
一切れのパンをくれた少女がいた。
私はパンを口にした。
それまで寒さで
こごえきっていた体。
あたたかさで満ちていくのを
感じた。
たった1つのパン切れでも、
命を作っていると
実感した瞬間だった。
たったひとくちが。
命をつなぐのだ。
嬉しいごちそう
そんなある日。
物資が届いた。
そんなに多くのごちそうは
見たことがなかった。
とてもいい匂いがした。
私は喜びでスキップしそうになった。
これだけの食べ物があれば
家族はどれほど喜ぶだろう。
私は嬉しさで小躍りしながら
ごちそうを持って帰った。
笑顔の食卓
美味しい。
美味しい。
みんなが喜んで食べた。
これほどみんなが喜んだのは
いつぶりだろうか。
食卓はあたたかい笑顔に
つつまれた。
そして
全員、死んだ。
絶望の瞬間
「何でこうなった…」
私は血をはきながら
苦しんでいる娘や妻を見て
体のふるえが止まらなかった。
そう。
騙されたのだ。
あれは物資なんかではない。
毒だった。
毒入りのごちそうだったのだ。
無自覚な悪行
「1匹いたら100匹いるって
いうよね?」
「まじで?こわっ」
「これなんかいいんじゃない?」
「ホウ酸ダンゴか。きくのかな?」
「とりあえずやってみたら?」
「うん。そうする」
持ち帰らせて、巣ごと退治
そんなキャッチコピーの商品を買った。
次の日から、ゴキブリは出なくなった。
解説
・ささいなことまで責任を持つ大切さ
たったひとくちのパンで
命をつなぐ者もあれば
何のためらいもなく、
命をうばう者もいる。
今日やった行い。
これからやろうとしている行い。
相手の人生にどう影響を与えるのか、
良い影響を与えられるように気をつけたい。
ほんのささいなことまでも
責任を持った生き方ができればと思う。
何気なく言った一言さえも。
相手にとっては
毒かもしれないのだから。
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