2Feb
「子どもは犬と一緒に育てるといいらしい」
という両親の教育方針で、
僕は犬に育てられました。
小学校に入ったばかりのころ、
授業を終えると、犬が迎えに来て、
僕は犬につれられて家に帰っていました。
親は仕事で忙しかったため、
犬が僕の迎えをしていたのです。
簡単に言えば、
下校をかねて散歩をしていたということになります。
僕はいつも犬と一緒でした。
遊びに行くときも、もちろん一緒です。
というか、犬は僕の保護者なので、
僕の行くところにどこでもついてきました。
一人で山へ遊びに行って遭難しかけたときも、
犬はそばにいてくれました。
いつも一緒にいてくれたのが犬でした。
そんなある日、
犬が突然ハゲました。
原因はわかりません。
犬と一緒に家に帰っていると、
道で会う人全員が言ってくるのです。
「ハゲとるね」
僕はだんだん恥ずかしくなってきました。
ハゲた犬につれられて
家に帰っているのが、
たまらなく恥ずかしかったのです。
それから僕は、犬と一緒に帰るのをやめました。
犬は家から出なくなりました。
僕の迎えをしなくてもよくなり、
犬はずっと犬小屋にいました。
僕は友達と遊ぶことで一生懸命で、
犬のことはすっかり忘れてしまいました。
そんなある日の朝ごはんのとき、
父が言いました。
「昨日、犬が死んだ」
誰も何も言いませんでした。
僕は、今でも思い出します。
いつも一緒にいてくれた犬のことを。
そして、僕が犬にしてしまったことも。
恥ずかしいという感情は、
本当はいらないものなのかもしれません。
人間関係も同じだと思うのです。
恥ずかしいから、ありがとうと言わない。
恥ずかしいから、大好きと言わない。
恥ずかしいから、見て見ぬふりをする。
僕はそれ以来、
恥ずかしいという感情を捨てました。
もう二度とあんな思いはしたくないから。
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